リース会計⑤(日本の新基準の早期適用)

企業会計

新リース基準の適用開始は、連結・単体ともに、2027年4月1日以後に開始する年度からとなりましたが、2025年4月1日以後に開始する年度からの早期適用も可能とされています。

新基準では、オペレーティング・リースやレンタル契約における借手側の会計処理が大きく変わり、「リースの識別」や「延長オプション期間」のような新たな考え方への対応も検討する必要があります。

今回は、リースの借手側の会計処理にフォーカスして、早期適用のメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

結論から申し上げますと、早期適用に向くケースはかなり限定的となり、以下のようなケースぐらいかと思います。

<日本の新リース会計基準の早期適用に向くケース>
1)一番手
早期適用に向く一番手としては、連結決算でIFRSを適用済で、かつ、IFRSの会計処理を単体決算に反映するためのインフラやフローを構築済のケースが挙げられます。

今回の日本の新リース会計基準は、IFRS(IFRS16)にかなり近い内容になっているといわれています。

連結決算でIFRSをすでに適用済であり、システム面や決算業務フローの面でも、単体決算の段階からIFRSの会計処理を反映することへの準備が整っている(あるいは、日本基準とIFRSの複数帳簿対応をすでに導入している)場合には、単体と連結を同じ会計処理とすることでGAAP調整の手間を省けるため、早期適用のメリットがあると考えられます。

2)二番手
上記1)以外では、日本国内の拠点でリースの借手となる契約がほとんど無く、かつ、海外の連結対象会社の所在国が、IFRSないしはIFRSとほとんど差のないGAAPとなっている国が大半であるために、日本基準の連結決算が新リース基準になると、国内外のグループ会社間の会計処理が統一できるというケースでも、早期適用のメリットがありそうです。

3)三番手
三番手になり得るケースとしては、現行のファイナンス・リースの借手用に、リースの新規契約や解約等の情報管理、リース債務の割引現価計算、リース資産の償却等の台帳、といった機能を備えたシステムを導入済であるケースが考えられます。

また、連結決算でのIFRS移行を近い将来に予定しており、そのための準備がかなり進んでいるケースも三番手になり得ますが、これから準備を始める会社に比べると導入リードタイムを短縮できるという点は確実に云えるかもしれませんが、早期適用を選択するかは準備の進捗次第のように思います。

早期適用しないとしても、2027年4月~の導入となると準備期間は2年半ほどになります。

リースという取引の性質上、オフィスや社宅の賃借やカーリースなど多岐に渡り、件数がかなり多く、取引の発生拠点もいろんなところに散らばることから、現行業務フローの見直しに加え、システム面で新しい会計処理の実施をどこまで後押しできるかもポイントになってくると考えられます。

また、日本基準の単体決算の段階から新基準での会計処理を反映していくため、法人税や消費税等の税務申告での対応※や、これを機に設備投資の範囲を見直す場合には、管理会計ルールや経営意思決定ルール(EX リース借手の新規契約は設備投資or経費支出?)の変更への対応といった事項も準備していく必要があると思われます。

※今のところ税務申告においてどんな調整が必要となるかは明らかでないため、令和7年(2025年)度の税制改正にて何等かの法整備がなされることが期待されます。

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