用語の意義
環境改善債務に関連する用語の意義は以下となります。
<用語の意義>
1)環境改善債務
環境改善債務とは、環境改善活動を実施することについての法的義務又は推定的義務のことを指します。
2)環境改善活動
環境改善活動には、土壌汚染の浄化、アスベスト等の有害物質の除去など、危険物質の調査・緩和・消去するための活動があてはまります。
3)推定的債務
推定的義務とは、法令又は契約では要求されていないが、企業の過去の実務慣行や外部に公表する等で妥当な期待を外部者の側に生じさせることで、企業が解体等の資産除去の活動を実際上回避できないことにより生じる義務のことをいいます。
推定的義務は『 資産除去債務(IAS37)』の回でも登場した用語ですが、ここでも同じ概念を使います。
環境改善債務の会計処理
環境改善債務は、「IAS37 引当金」に従って会計処理を実施します。
環境改善債務の認識と測定に関連するIFRS規定の要旨は以下のとおりです。
<環境改善債務の会計処理ルール>
1)引当金の認識
引当金は、次の(1)~(3)を満たす場合に認識しなければならない、とされています。
(1) 企業が過去の事象の結果として現在の義務(IAS37.10に記載の「法的義務」又は「推定的義務」を指す、以下同じ)を有している
(2) 当該現在の義務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高い(3) 当該現在の義務の金額について信頼性のある見積りができる
2)引当金の測定
引当金として認識する金額は、期末日における現在の義務の決済に必要な支出の最善の見積りとして測定する、とされています。
また、引当金の測定方法は、最頻値法(①)もしくは期待値法(②)のいずれか適切な方法を用いる、とされています。
① 最頻値法
・・・発生し得ると考えられる対価の額のうち最も可能性の高い単一の金額
② 期待値法
・・・発生し得ると考えられる対価の額を確率加重平均した金額
なお、引当金の測定金額について、以下の2つのケースについては、上記以外にも留意事項があります。
●処分見込みの資産からの利得があるケース
処分見込みの資産からの利得は、引当金の測定金額に反映してはいけない、とされています。
●引当金決済支出の一部又は全部を他の者から補填を受けるケース
引当金決済支出の一部又は全部が他の者から補填されると見込まれる場合で、各社が義務を決済すれば補填を受けることがほぼ確実となった時は、当該確実となった時点で、引当金とは別個に当該補填を資産として認識しなければならない、とされており、引当金と補填を受ける予定の資産(EX 未収金)を両建てで計上することになります。
さらに、補填として認識する金額は、引当金の金額を超えてはならない、とされていますので、引当金と両建てとなる未収金等の資産は引当金の額が上限となります。
3)環境改善債務の認識と測定
上記1)&2)の認識と測定ルールを環境改善債務にあてはめますと、環境改善債務は、環境改善活動を実施することの法的義務又は推定的義務が生じた時に認識し、その金額は将来の支出見込額で測定する、ということになります。
なお、推定的義務が生じた時とは、具体的には、たとえば、環境改善活動の履行を外部の第三者に公表した時点が該当すると考えられます。