持分法(IAS28)

企業会計

持分法の会計処理では、投資を出資当初は取得原価で認識しますが、その後は、投資先の純資産と損益のうち投資者の持分に帰属する部分の増減に応じて取得原価を修正していくことになります。

持分法の会計処理の適用対象となる投資としては、以下の1)~3)の3つのパターンがあると考えられます。

<持分法の適用対象となる投資のパターン>
1)持分比率が20%以上~50%未満の投資
他の会社の議決権の20%以上、50%以下を直接または間接に所有する場には、持分法の会計処理を適用します。

2)持分比率が20%未満だが、投資先に重要な影響力がある投資
議決権の20%を保有していない場合であっても、他の会社に重要な影響力を有している場合は持分法を適用します。

3)共同支配
投資先が「IFRS11」に規定された『共同支配企業』に該当した場合は、当該投資先に対する投資に持分法を適用します。

投資先への重要な影響力の有無は、上記1)や2)の場合にポイントとなりますが、以下の「IAS28.5~9」が関連するIFRS規定となります。

<投資先への重要な影響力(IAS28.5~9)>
〔IAS28.5〕
企業が、投資先の議決権の20%以上を、直接的に又は(例えば、子会社を通じて)間接的に保有している場合には、重要な影響力がないことが明確に証明できない限り、企業は重要な影響力を有していると推定される。
反対に、企業が、直接的に又は(子会社を通じて)間接的に、投資先の議決権の20%未満しか保有していない場合には、重要な影響力が明確に証明できる場合を除き、企業は重要な影響力を有していないと推定される。
他の投資者が大部分又は過半数を所有していても、ある企業が重要な影響力を有することを必ずしも妨げるものではない。

〔IAS28.6〕
企業による重要な影響力は、通常、次のいずれかの方法で証明される。
(a) 投資先の取締役会又は同等の経営機関への参加
(b) 方針決定プロセスへの参加(配当その他の分配の意思決定への参加を含む)
(c) 企業と投資先との間の重要な取引
(d) 経営陣の人事交流
(e) 重要な技術情報の提供

〔IAS28.7〕
企業は、普通株式に転換可能な株式ワラント、株式コール・オプション、負債性金融商品若しくは資本性金融商品、又は他の類似の金融商品で、行使又は転換された場合に他の企業の財務又は経営の方針に対する議決権を企業に与えるか、又は他の当事者の議決権を減少させる潜在能力(すなわち潜在的議決権)を有するものを保有している場合がある。
他の企業が所有している潜在的議決権も含めて、現在行使可能又は転換可能な潜在的議決権の存在及び影響は、企業が重要な影響力を有しているかどうかを判定する際に考慮される。
潜在的議決権は、例えば、将来のある日付又は将来の事象が発生するまで行使も転換もできない場合には、現在行使可能でも転換可能でもない。

〔IAS28.8〕
潜在的議決権が重要な影響力に寄与するかどうかを判定する際には、企業は、経営者の意図及び行使又は転換するための財務能力を除き、潜在的議決権に影響を与えるすべての事実及び状況(個々であろうと組み合わせたものであろうと、潜在的議決権の行使の条件及びその他の契約上の取決めを含む)を検討する。

〔IAS28.9〕
企業は、投資先の財務及び経営上の方針の決定に参加するパワーを失う時に、当該投資先に対する重要な影響力を喪失する。
重要な影響力の喪失は、その絶対的又は相対的な所有水準に変更があろうとなかろうと生じる可能性がある。
例えば、関連会社が政府、裁判所、行政又は規制当局の支配下に入る場合には、重要な影響力の喪失が生じる可能性がある。また、契約上の取決めの結果として生じる可能性もある。

連結親会社グループと持分法の投資先との間で会計方針を統一する必要があります。

このため、持分法で使用する投資先の財務諸表は、連結親会社グループと同一環境下にある同一取引に対して、連結親会社グループと同じ会計方針を適用して作成した状態のものとしなければなりません。(IAS28.35)

さらには、持分法で使用する投資先の財務諸表は、原則として、連結親会社の決算日(EX 6月30日、9月30日、12月31日、3月31日など)と同一の日付で作成されたものとする必要もあります。

なお、決算日が連結親会社の決算日と異なる日付となる場合には、「IAS28.34」に従って処理することになります。

<持分法の投資先の決算日が連結親会社の決算日と異なる場合の対応(IAS28.34)>
〔IAS28.34〕
第33項に従って、持分法を適用する際に用いる関連会社又は共同支配企業の財務諸表を企業と異なる日付で作成する場合には、その日付と企業の財務諸表の日付との間に生じた重要な取引又は事象の影響について調整を行わなければならない。
いかなる場合にも、関連会社又は共同支配企業の報告期間の末日と企業の報告期間の末日との差異は3か月以内でなければならない。 報告期間の長さとその末日の差異は毎期同じでなければならない。

国際会計基準審議会(IASB)は9月19日、IAS28 関連会社および共同支配企業に対する投資」の改正に関する公開草案を公表しています。(意見募集期限:2025年1月20日)

公開草案では、主な改正点として以下の①~⑤の5つを挙げて意見を募集していますが、なかでも④における連結消去の考え方・金額が現行基準と大きく違う点の実務影響が一番大きいと云われており、どんな方向に決まるか注目されています。

<公開草案にて現行比で改正が入る項目>
① 重要な支配力を獲得した場合の会計処理(重要な影響力の獲得に伴う割合の変動)
② 持分割合に変更があった場合の会計処理(重要な影響力を保持したまま、持分割合を変更する場合)
③ 関連会社に対する投資の損失の認識
④ 関連会社との取引
⑤ 関連会社投資の減損

タイトルとURLをコピーしました